ファボラトリーブログ
桃源郷芸術祭2019 体験レポート
北茨城市で、年に一度だけ現れる桃源郷。
ここに集った全てが
見る者を不思議な世界旅行に誘う。
「桃源郷芸術祭」
( gallery 期待場エントランス・第12回北茨城ひなあかり )
旧小学校を改修し生まれた「gallery 期待場」は、
未知の世界への窓となった。
小学校の廊下が、教室が、体育館が、私の古い記憶を呼び始める。
子供の頃に見えていた景色は、どんなだったっけ。
少女の私は、この世界をどうやって旅するだろう。
廊下に飾られた子供たちの作品を見ながら、ふとそんなことを思う。
( 廊下には子どもアーティストの作品が展示されていた。全106作品 )
( オルヴィエートからの眺望/毛利元郎 )
( 未来の虹/大森健史 )
( かまど神・古民家/平良重 )
作品に身を委ね、世界の上を漂ってゆく。
まだ見ぬイタリアの地を歩き、
太陽にも負けない生命力を浴び、
日本の神々の声に耳をすます。
( 陰と陽/村田一雄 )
村田一雄さんの作品「陰と陽」もまた、私の中の少女を呼び起こした。
子供のころ強い衝撃を受けたジブリ映画「千と千尋の神隠し」を思い出す。
大人の中の子供を一瞬で蘇らせるような、芸術にはそんな力があった。
期待場から車で10分ほど走ると、
桃源郷芸術祭のもうひとつの会場「ARIGATEE」がある。
目印の大きな赤い屋根が見えてくると、なんだかほっとした。
1年前、ARIGATEEで豚汁を振舞ってくれたおばあちゃん。
元気にしているかな、あの豚汁、今年も食べられるかな。
祖父母の家を訪ねるような気持ちで、赤い屋根の建物へ入る。
( ARIGATEE会場 )
( 地元食堂アリガ亭 )
いたいた、あのおばあちゃん。
「今年は豚汁食ったか? ごはんも食ってけ」
会うのは2度目なのに、本当に孫になったかのよう。
来る者を拒まず、深い懐で受け止めてくれる。
ARIGATEEを取り囲む自然も、きっとそれは同じだ。
ARIGATEEの一室に大きなスクリーンがかかっていた。
映っていたのは、音声を操作するための世にも奇妙な画面。
( インスタレーションを行うアーティストSINSENさん )
手元の機械で軽快に音を操作しているようだ。
音源は、近隣で録音された音をアプリに送ってもらっているそう。
自然と人をつなぐ音楽が、のどかな里に流れ出していた。
期待場に戻ると、再び音楽の部屋に出会った。
壁一面に楽器が並び、五浦の海に浮かんでいる。
小さな机に置かれたピアニカには「さわってみよう!」の文字。
( Past Landscape, Music For Closed School/石松豊+國分友美子)
鍵盤を押すと、照らされた楽器の上にパッと明るいマークが開く。
心が躍った。ワクワクした。
音楽室はこんなにも自由になれるのか。
もっともっといろんなものが、柔軟で奔放で自由であっていいのかもしれない。
ちょうど子供達の想像力みたいに。
( ワークショップ「手形アートを作ろう!」北茨城子どもアート教室 舟生太一 )
「子供の想像力は無限だ」なんて、大人が言うのを耳にする。
大人と子供は、何がそんなに違うんだろう。
今の私があるのは、子供の私が確かにいたから。
何をするにも新鮮で、目の前に広がる世界が不思議なもので溢れていた。
大人になるって、一体どういうことだろう。
ただ一つ分かったのは、
「子供の頃の私が戻ってきた」こと。
大人の中の子供を、一瞬にして蘇らせる。
芸術には、どうもそんな力があるらしい。
川原田晴可