作家
ガラス作家
門馬 寛子
北茨城市内が見渡せる眺望の良い高台にある、ガラス工房シリカ。 ここには全国から集まった若手ガラス作家が在籍している。門馬寛子さんもその一人。赤い炎より青い炎の方が温度が高いことのように、一見クールな雰囲気だが若くして独自の視点と情熱、そして創作への誠意を持っている。
思い返すと、小名浜港に置いてあったガラスの浮き玉が好きだった。 福島県いわき市出身の門馬さんがガラスに魅せられた理由は、小さな頃に見たそんな原風景。大学を卒業してからは、ろう学校の講師として就職。だが、しまい込んでいたガラスへの気持ちが高まるのと同時に、ろう学校という特別な学校での教師としての自分の覚悟を問う日々が続いた。職場の先生に気持ちを打ち明けると挑戦するなら今じゃない?と、背中を押してもらった。そうして、神奈川県の川崎にある東京ガラス工芸研究所の門を叩いた。
北茨城市内が一望出来る高台にガラス工房シリカはある
作品を制作されている様子を伺うとクールな印象を受けた。 だが、お話しを聞くと「さっきも作業中楽しい楽しいと心の中で思ってました。」とのこと。そして門馬さんのガラスへの向き合い方は「用途よりも、ガラスの見え方やその景色の方に興味がある。」と完全に芸術視点。門馬さんにとってガラスの魅力とはどんな点にあるのだろうか。 「例えば絵の具であれば混ざると単色になってしまうけど、ガラスの中では混在して色が存在するのが面白いですよね。あとは、ガラスって記憶する素材だなって思います。作業工程中の成功も失敗もすべて記憶していて、それが形になる。しかもそれを何千年も保持することが出来るのが魅力かなと。」おお!面白い。
専門学校の卒業制作のお皿。お皿は底までの距離があるのが面白いと
「たぶん今はどこでもそうなんでしょうけど、大量生産の品と私たちが作っているような手で作ったものの違いを理解してもらうのがなかなか難しいなと感じています。そういった意味ではガラス製品の過程を見学出来て、体験出来て、購入出来るようなこちらの施設の役割ってもっとあるなと。大量生産を否定するわけでは決してないんですけど、手で作った仕事の素晴らしさや役割をちゃんと伝えたいです。」恐らく、今まで多くの時間を割いて自分と向き合ってきたのだと思う。まっすぐ自身の考えを表現する姿勢がこの人の作った作品をもっと見たいと思わせてくれる。きっとここを拠点に、今後さらに活躍をされていくのだろうなと思う。