作家
陶芸
菊地 秀利・美恵
菊地秀利さん美恵さんご夫妻はお二人で日用品としての陶器作りに取り組まれている。 そして、米農家でもあり、野菜も少量だが栽培されている。以前は、北茨城市役所近くで趣のある蔵を改装し、 喫茶店も営まれていたそう。食材、料理、そして器と。振り返ってみると、食に関する工程全てを仕事とされてきた。 そんなお二人が作り出す陶器は、暮らしを豊かにするための日用品としての説得力があるのではないかと思う。
陶芸に関しては、奥様の美恵さんが少し先輩。 以前営まれていた喫茶店で自分で作った器で食事を提供したいと思ったことがきっかけ。その制作工程を手伝ううちに、旦那さんの秀利さんも始めたそう。夫婦二人三脚といえど、お二人はそれぞれ違う作風を持っている。ちょっとしたライバル関係にあるかも、とお二人は笑う。
「自分達は芸術家だとか、芸術作品を作っているという意識はないからね。」ご自身を陶芸家ではなく、焼き物屋だと秀利さんは言われる。こうであるべきだ、というのではなく、こうでも良いんじゃない?という優しい日用品は人を朗らかにする。
取材を終えた後、母屋で頂いたお食事がこれまた素晴らしく。ご夫婦が作られた”焼き物”の良さを実感するには最高の機会であった。高齢により維持が出来なくなった田んぼを出来る範囲で引き取り、生産方法にこだわって作られたお米。飲食経験もなかったけど、家庭料理に少し工夫を加えようと試行錯誤されたおかずの数々。言葉では表現されない菊地ご夫妻の優しさや誠実な生き方を感じた。お皿一品買えば生活が豊かになるわけではない。まずそれが作られた作者の思いや時間と、これからそれを使ったり眺めたり味わう時間に豊かさが待っているのだと思う。