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花と器展体験レポート〜ガラス工房SILICA〜

『ガラス工房SILICA』の画像

『ガラス工房SILICA風景』の画像

 北茨城華川の高台に建つガラス工房SILICA。

山道を進むにつれて増す寒さを中和するかのように、木々が暖かい色を放って、来場者を歓迎する。もう時期、木々たちも葉を落とし、寒さを煽る風景と化すのだろう。 

 『花と器①』の画像

『花と器②』の画像

1年に一度、秋に開催される「花と器展」。
8回目となる今回、お二方の話を伺うことができた。

 華道家の澤井斐子さん。とびきり明るく、マイナスイオンを発しているのではないかと思うほど、お会いした瞬間から幸せな気分にさせてくれる、まさに華のような方。澤井さんご自身が、おばの影響で高校生の時から華道を習い始めたこともあり、「若い方にもお花に興味を持って欲しい」と、熱く語ってくれた。

『花と器③』の画像

 澤井さんは、作品で季節を感じてもらえるよう、なるべく身近にある自然のもので素材を揃えるという。中心の朱い蘭の花は澤井さんのご主人が育てたもので、おおよそ一作品に一輪は添えるようにしているとのこと。夫婦仲の良さが伺える。こういったストーリーを知れたときが一番、直話の価値を感じられる瞬間である。 

『花と器④』の画像

 オレンジ色の実は“ツノナス”というナス科の植物で、またの名を“フォックスフェイス”という。その名の通りキツネの顔のような形をしている。鮮やかな見た目からすると、柿のような味がするのだろうか、いや、ほおずきに近いか。そんな事を考えながら「どんな味がするんですか?」と尋ねると、専ら観賞用とのこと。どうやら毒があるらしい。何でも見た目だけで判断すると痛い目に合うということ。
注げる水の量を考慮して、少ない水でも安心できる素材を選ぶ。技術やセンスだけでなく、当然、植物の知識も必要で、多方面からの試行錯誤を経て、1つの作品が生まれるのだ。

  そして、今年4月よりSILIKAで活動されているガラス作家の髙坂真次さん。ガラス工芸に対する想いや執念について語る眼差しから、髙坂さんの意志の強さが伺える。 

『花と器⑥』の画像

 髙坂さんの作品は、ほとんどが目立った着色をしていない。色を入れたとしても、一部であるか、ほんのり色付く程度。着色が関係して、ガラス本来の性質が変わることはないとのこと。つまり、作品の色使いで、作家の好みやこだわり、製作時の心境までも読み取れるというわけだ。

『花と器⑩』の画像

 こちらの器は、「ご自由に触れてみてください」と書かれていたとしても、あえて触れようとは思わないだろう薄さ。写真で伝わりにくいのが悔しい。幸い、「作品にはお手をふれないでください」と書かれていたので、触れずに済んだのだが、この薄さを生み出すのも至難の技。やわらかい雰囲気の髙坂さんからは想像もつかないが、製作しているときは誰をも寄せ付けない空気感を漂わせるのだろうか。製作風景も見てみたい。「薄いから扱いに困ったわ」と笑って話す澤井さんからは、やはりマイナスイオンが発せられていたと思う。 

『花と器⑦』の画像
 こちらの器は、ガラス本来の動きをそのまま生かした作品。一度、円に形作ったあと、ガラスの力や性質に任せて自然に遊ばせる。「そうすると、ガラスの表情が豊かになるんです」と語る髙坂さんの表情も豊かになっていた。 

『花と器⑧』の画像

『b』の画像

『c』の画像

『a』の画像

 ガラス作家の想いを華道家が汲み取り、華に注ぐ。ガラス作品も華道作品も“同じもの”の再現は叶わない。ましてや華は生き物、命あるものに変化は付き物。その儚さが瞬間の作品を生み出すゆえに、見た人は其れを尊び、心に焼き付ける。 

地域レポーター 末長沙千

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